【洋書レビュー】There’s a Boy in the Girl’s Bathroom(Louis Sachar)
はじめに
今回紹介するのは、Louis Sacharによる児童書『There’s a Boy in the Girl’s Bathroom』です。
これまでに同じ作者の『Marvin Redpost』シリーズや、より有名な『Holes』も読んできましたが、本作はその中間くらいの難易度で、読みやすさと内容の深さのバランスが絶妙でした。
タイトルからはコミカルな印象を受けるかもしれませんが、実際には、人づきあいが苦手な少年が、周囲との関係を通じて少しずつ自信を取り戻していく物語で、児童書ではありつつも個人的にはとても心を動かされた作品でした。
どんな話か?│"There’s a Boy in the Girl’s Bathroom"のあらすじと特徴
主人公は Bradley Chalkers。学校では問題児とされ、クラスでも孤立しています。彼は人とうまく関わることができず、自分の殻に閉じこもり、反抗的な態度をとることで周囲と距離をとっています。
そんな彼の前に、新任のスクールカウンセラーである Carla が現れます。
Carlaは決して評価や指導を押しつけるのではなく、Bradley本人の気持ちに寄り添い、対話を通じて少しずつ信頼関係を築いていきます。
ストーリーは、Bradleyが他者との関係を通して自分自身と向き合い、変わり始める過程を描いています。
児童書でありながら、「信頼」、「自己肯定感」、「他人の視線がもたらす影響」など、非常に普遍的で深いテーマが込められており、大人が読んでも心に響く内容です。
英語のレベルと読みやすさ(体感ベース)
私はこれまで同じ作者の作品では、『Marvin Redpost』シリーズや『Holes』を読んできた経験と比較して、次のような印象を持ちました。
- Marvin Redpostよりは少し難しい(語数・内容の面で)
- Holesよりは断然読みやすい
語彙はやや多めですが、文体はシンプルで、会話中心の構成になっているため、全体としては読みやすく感じました。
「Marvin Redpostでは物足りないけど、Holesはまだちょっと重たい」という方に、ちょうどよい難易度だと思います。
実際に読んでみた感想
Bradleyの姿を追いながら、「ああ、自分もこういう時期があったな」と感じることが何度かありました。人との距離感がうまく取れなかった頃、自分を守るために壁をつくり、それがさらに孤立につながるという悪循環。Bradleyの姿は、過去の自分と重なる部分が多く、とてもリアルでした。
中でも印象的だったのは、他人から“悪い子”と見られていることで、自分も本当にそうだと思い込んでしまう構造です。
「どうせ自分なんて」と感じてしまう自己肯定感の低さが、さまざまな言動に表れてしまう。こうした負のスパイラルが、物語を通じて丁寧に描かれていました。
そして何より心に残ったのが、Carlaの関わり方です。
彼女は評価やアドバイスを押しつけるのではなく、Bradleyの言葉を丁寧に受け止めながら、少しずつ心を開いていく。Carlaが無理に変えようとしないからこそ、Bradley自身が「変わってもいいかもしれない」と思えるようになる。そのプロセスがとてもリアルで本質的だと感じました。
人は本来、前向きで、誰かとつながりたい存在なのだと思います。
ただ、その本来の自分を押し込めてしまう原因が、環境や他人のまなざしにあることもある。「信じてもらうことで、自分を信じられるようになる」——この作品は、その大切さを静かに伝えてくれる一冊でした。
書籍情報(参考)
タイトル:There’s a Boy in the Girl’s Bathroom
著者:Louis Sachar
発売年:1987年
ページ数:約200ページ(ペーパーバック版)
Kindle版あり
*単語数:39,245 words
*How Long to Readにて確認
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