【洋書レビュー】The Little Prince(Antoine de Saint-Exupéry)│星の王子さま

はじめに

今回ご紹介するのは The Little Prince(星の王子さま) です。私は中学1年生の頃、読書感想文を書くために日本語版を読んだことがありました。そのときの記憶がうっすら残っていたため、英語で読んでも比較的スムーズに進めることができました。ただ、児童文学ではあるものの内容が深い作品のため、子どもの頃にはあまり理解できなかった部分が、大人になってから読むことで深く刺さるように感じました。

どんな話か?

物語は、飛行士である「ぼく」が飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着するところから始まります。孤独の中で修理に取り組んでいた「ぼく」の前に現れたのが、星の王子さまでした。王子さまは「ヒツジの絵を描いて」と唐突に頼み込み、その無邪気さと強引さに「ぼく」は最初とまどいながらも次第に心を開いていきます。

王子さまは、自分の小さな星やそこに咲くバラのこと、そして地球に来るまでの旅で出会ったさまざまな大人たちについて語ります。王子さまと「ぼく」との対話を通じて、人を愛すること、友情や絆の意味、そして大人になるとはどういうことかが物語全体のテーマとして描かれます。

英語のレベルと読みやすさ(体感ベース)

語彙や文法はそれほど難しくなく、シンプルな英語で書かれています。一方で子ども向けの物語として分類されていますが、比喩や寓意的な表現が多く、単純な直訳では理解が難しい部分もあります。私の体感では「児童文学としては読みやすいが、テーマの深さゆえに読み進めながら考えさせられる作品」という印象でした。日本語で一度読んだ経験があったため、内容を追いやすく、理解度はかなり高めに感じられました。

実際に読んでみた感想

今回の再読で特に印象に残ったのは、王子さまが旅の途中で出会う大人たちの姿でした。

王子さまは自分の小さな星を離れ、さまざまな星を巡ります。その中で出会うのは、王様、うぬぼれ屋、酒飲み、実業家、点灯夫、地理学者といった人物たちです。彼らはそれぞれが自分の世界に閉じこもり、同じ行為を繰り返し、そこから一歩も動こうとしません。

  • 王様は誰もいない星で「支配すること」に固執し、命令を出すことで存在意義を保っています
  • うぬぼれ屋は「他人からの称賛」を求め続け、それが生きる目的になっています
  • 酒飲みは「恥ずかしさを忘れるために飲む」という、出口のない悪循環に陥っています
  • 実業家は「星を所有している」と言い張り、ひたすら数を数え続けています
  • 点灯夫はただひたすらランプをつけて消すことを繰り返し、自分の役割に縛られています
  • 地理学者は本を前にして世界を知った気になっていますが、自らは決して探検に出ようとはしません

大人になった今読むと、これらのキャラクターが寓話として描いているものがよく分かります。人は誰しも社会の中で「役割」や「欲望」にとらわれ、いつの間にか本当に大切なものを見失ってしまう。それを王子さまの純粋な視点が浮き彫りにしているのだと思います。

子どもの頃は単に「変な大人たちが出てくる話」としか受け取っていなかったのですが、今はむしろ「自分自身がこうした大人の姿に重なってはいないか」と考えさせられました。仕事や生活の中で数字や役割に追われる日常と、王子さまが出会った大人たちの姿はどこか重なって見えてしまうのです。

このように「大人たちの姿」を通じて、サン=テグジュペリが伝えたかったメッセージは、今になってようやく実感を伴って迫ってきたように思います。

書籍情報(参考)

タイトル:The Little Prince(星の王子さま)

著者:Antoine de Saint-Exupéry(サン=テグジュペリ)

出版年:1943年

Kindle版あり

*単語数:16,255 words

*How Long to Readにて確認