【洋書レビュー】The Boy Who Lost His Face(Louis Sachar)|ユーモラスに描かれる成長物語
はじめに
最近はすっかりLouis Sachar作品にはまっています。『Holes』や『There’s a Boy in the Girl’s Bathroom』などを読み終え、次に手に取ったのが本作『The Boy Who Lost His Face』です。タイトルに惹かれて読み始めましたが、文章は平易で理解しやすく、主人公の失敗や葛藤がユーモラスに描かれているので最後まで楽しんで読むことができました。
どんな話か?
主人公の David は、ごく普通の中学生。仲間に認められたい一心で、悪ふざけに加担し、あるおばあさんの杖を盗んでしまいます。するとその直後から、まるで呪いを受けたかのように、David の周囲では失敗や恥ずかしい出来事が次々と起こり始めます。
やがて友人からも距離を置かれ、クラスの笑いものとなり、まさに「顔を失った」ような状態に追い込まれる David。しかし、転校生や心優しいクラスメイトとの関わりを通じて、自分の弱さや行動を見直し、少しずつ成長していく姿が描かれます。失敗や葛藤をコミカルに描きつつ、友情や自己受容といった普遍的なテーマが込められた物語です。
英語のレベルと読みやすさ
英語のレベル感としては、以前読んだ There’s a Boy in the Girl’s Bathroom と同じくらいだと感じました。文章は比較的平易で、難解な構文や語彙は少なく、全体として読みやすい部類に入ります。
一方で、この本は登場人物が多く、関係性を整理するのに少し時間がかかりました。そのため、読み始めは前作よりもやや読みづらさを感じました。
また、物語の理解に欠かせないキーワードである curse(呪い)という単語が最初は分からず、辞書で調べてようやく意味を理解しました。このように、基本的には平易ながらも、要所で重要な単語の理解が必要になる場面があります。
実際に読んでみた感想
本作の魅力は、David の失敗や恥ずかしい体験が次々と描かれるコメディ的な展開にあります。思わず笑ってしまう場面が多い一方で、友人関係の難しさや「自分なんて…」と落ち込む彼の姿には共感する部分も多くありました。
特に印象的だったのは、David が新しい仲間と関わる中で少しずつ変わっていく過程です。以前の友人たちに見放されたことで孤立しますが、その一方で、自分を否定せずに受け入れてくれる友人たちと出会うことで、自信やアイデンティティを取り戻していきます。
タイトルにある “The Boy Who Lost His Face” は、「自分自身を見失った」ことの暗喩として読めます。周囲の失笑や孤立によって、David は自信やアイデンティティを失ってしまいますが、物語の中で新しい関係や体験を通じて少しずつ自己を取り戻していきます。その過程がタイトルに深く結びついており、読後には「自分らしさをどう取り戻すか」という普遍的な問いが残ります。
書籍情報(参考)
タイトル:The Boy Who Lost His Face
著者:Louis Sachar
発売年:1989年
ページ数:約233ページ(ペーパーバック版)
Kindle版あり
*単語数:42,510 words
*How Long to Readにて確認